町のイベントであったり、春まつりや、恒例のイベントであったりと
予定通りの昔話の出前だった。
出前の難しさは一体どんな人が何人位集まるか、
さっぱりわからんところにある。
でも最近は慣れてきたせいか、どこでも楽しく語らせてもらっている。
さて、忘れがたい、思い出となるイベントがあった。
4月の山の上でのイベントだった。
午前中1回、午後1回の屋外でのイベントでのことだ。
午前中は雨もなく、まあまあの人数が昔話を聞いてくれた。
ところが昼ごろから霧雨となり、気温も大いに下がってきた。
太鼓の出し物が終わって、私の出番だが、会場は濃い霧に
包まれて、あまりの寒さに人々は帰ってしまった。
観客ゼロだ。
20年やってるが、こんなことは初めてだ。
中止かと思ったが、司会の人が私の案内をしてしまった。
「よしっ」と立ち上がると
「出店者の皆さん、お客さんみーんな帰っちまったんだから
お耳をこっちに貸してね」
「太鼓の皆さんも協力してね」
1話だけにして語り終えたら、
霧の向こうから、背後から、一斉に拍手が沸き起こった。
約40人が聞いてくれたね。
うれしかったね。忘れられないね。

ひろじい